「最近ストレスが溜まっているな」と感じている時に、ふと歯の噛み合わせに違和感を覚えた、という経験はありませんか。実は、ストレスと噛み合わせの不調には、浅からぬ関係があると考えられています。私たちの体は、ストレスを感じると無意識のうちに筋肉が緊張しやすくなります。特に、顎周りの筋肉(咀嚼筋)は、ストレスの影響を受けやすい部分の一つです。精神的な緊張や不安、プレッシャーなどが続くと、日中、気づかないうちに歯を強く噛みしめていたり、夜間に歯ぎしりをしたりする「ブラキシズム」と呼ばれる状態を引き起こしやすくなります。このブラキシズムによって、特定の歯に過度な力が持続的にかかると、歯の周りの組織(歯根膜など)が炎症を起こしたり、歯がわずかに動揺したりして、噛み合わせた時に「急に特定の歯だけが高く感じる」「なんだか噛み合わせがしっくりこない」といった違和感として現れることがあります。また、顎関節にも負担がかかり、顎が痛んだり、口が開きにくくなったりする顎関節症の症状を伴うこともあります。さらに、ストレスは自律神経のバランスを乱し、唾液の分泌量を減少させることがあります。唾液には、口の中の細菌の増殖を抑えたり、歯の再石灰化を促したりする重要な役割がありますが、唾液が減ると虫歯や歯周病のリスクが高まり、それが間接的に噛み合わせの不調に繋がる可能性も否定できません。このように、ストレスは直接的、間接的に噛み合わせに影響を与える要因となり得るのです。もし、急な噛み合わせの違和感とともに、最近ストレスを感じる出来事が多かったり、朝起きた時に顎が疲れている感じがしたりするようであれば、ストレスが関与している可能性も考えてみましょう。もちろん、噛み合わせの違和感には他の原因も考えられるため、自己判断は禁物です。まずは歯科医師に相談し、適切な診断を受けることが大切ですが、同時に、自分なりのストレス解消法を見つけ、心身のリラックスを心がけることも、健やかな噛み合わせを保つためには重要と言えるでしょう。