矯正歯科医に聞く1年経過時の評価ポイント

歯列矯正治療を開始して1年が経過した時点は、治療の進捗状況を評価し、今後の治療計画を再確認する上で重要な節目となります。私たち矯正歯科医が、この1年経過時にどのようなポイントを評価しているかについてご説明します。まず、最も基本的な評価は、当初立案した治療計画通りに歯が移動しているかどうかの確認です。口腔内写真、レントゲン写真、歯型模型などを治療開始時のものと比較し、歯の移動量や方向、スピードが適切であるかを精査します。特に、抜歯を行った症例では、抜歯スペースが計画通りに閉鎖してきているか、あるいは意図しない歯の傾斜や回転が生じていないかなどを注意深く観察します。次に、噛み合わせの状態評価です。単に歯が並んでいるだけでなく、上下の歯が機能的にしっかりと噛み合っているか、特に臼歯部(奥歯)の嵌合状態や、前歯の被蓋(オーバージェット、オーバーバイト)が適切になってきているかを確認します。また、顎の動き(開閉口運動や側方運動)に異常がないか、顎関節に痛みや雑音が生じていないかも重要なチェックポイントです。口腔衛生状態の評価も欠かせません。矯正装置を装着していると、どうしても清掃性が低下しやすいため、虫歯や歯肉炎が進行していないか、プラークコントロールが適切に行われているかを評価し、必要であれば再度、歯磨き指導や専門的なクリーニングを行います。さらに、患者さんご自身の協力度も評価の対象となります。ゴムかけ(顎間ゴム)や補助装置の使用が指示通りに行われているか、定期的な通院が守られているかなどは、治療の成否を左右する重要な要素です。そして最後に、患者さんの満足度や治療に対するモチベーションも確認します。治療の進捗状況を分かりやすく説明し、患者さんが抱える疑問や不安を解消することで、残りの治療期間も前向きに取り組んでいただけるようにサポートします。これらの評価を総合的に行い、必要であれば治療計画を微調整しながら、最終的なゴールに向けて治療を進めていきます。