歯列矯正治療を受けたいけれど、金属の装置が目立つのが気になる…そんな悩みを抱える方に選ばれているのが、セラミックブラケットを用いた矯正治療です。セラミックブラケットとは、歯の表面に取り付ける小さな装置(ブラケット)の素材に、歯の色に近い乳白色や透明感のあるセラミックを使用したものです。従来の金属製ブラケットと比較して、格段に目立ちにくく、審美性に優れているのが最大の特長です。このセラミックという素材は、元々陶材の一種であり、食器や美術品、あるいは歯科治療では被せ物(クラウン)や詰め物(インレー)などにも広く用いられています。生体親和性が高く、アレルギーの心配が少ないこと、そして何よりも天然歯に近い自然な色調と質感を再現できることから、審美歯科材料として非常に優れた特性を持っています。歯列矯正用のセラミックブラケットも、この素材の利点を活かして開発されました。装着すると、ブラケット自体が歯の色に溶け込むように馴染むため、特に遠目からでは矯正装置をつけていることが分かりにくいほどです。笑った時や話す時に、口元で金属がギラギラと光るのに抵抗がある方にとっては、非常に魅力的な選択肢となるでしょう。また、セラミックブラケットは、変色や着色にも強いというメリットがあります。プラスチック製のブラケットの場合、カレーやコーヒー、ワインといった色の濃い飲食物によって徐々に黄ばんでしまうことがありますが、セラミックは表面が滑沢で吸水性が低いため、長期間使用しても色の変化が起こりにくく、治療期間中も美しい白さを保ちやすいのが特徴です。さらに、強度や耐久性にも優れており、矯正治療に必要な力をしっかりと歯に伝えることができます。以前は、セラミックブラケットは金属ブラケットに比べて強度が劣ると言われた時期もありましたが、近年の製品は改良が進み、十分な強度を備えています。ただし、非常に硬い素材であるため、噛み合わせによっては対合する歯(噛み合う相手の歯)を摩耗させてしまう可能性がゼロではないため、その点は歯科医師が適切に判断し、必要に応じて調整を行います。セラミックブラケットを用いた矯正治療は、基本的に表側からの矯正(唇側矯正)に適用されます。ワイヤーを通すことで歯を動かしていくという基本的なメカニズムは金属ブラケットと同様ですが、見た目の印象は大きく異なります。