マウスピース矯正は滑舌に優しい?

近年、目立たない歯列矯正として人気を集めているマウスピース型矯正装置。透明なマウスピースを段階的につけ替えて歯を動かすこの方法は、従来のワイヤー矯正と比較して、滑舌への影響が少ないと言われています。その主な理由は、装置の形状にあります。マウスピースは歯列全体を薄く覆う滑らかな形態をしており、ワイヤー矯正のブラケットやワイヤーのように凹凸が少なく、舌や唇の内側に引っかかったり、擦れたりする部分が少ないためです。そのため、装着直後から比較的スムーズに会話ができる方が多いようです。実際に、マウスピース矯正を選んだ方からは、「思ったより話しにくくなかった」「数日でほとんど違和感がなくなった」といった声が聞かれます。しかし、全く影響がないわけではありません。マウスピースの厚み分だけ、どうしても口腔内のスペースはわずかに狭くなります。そのため、装着し始めの頃は、舌が少し窮屈に感じたり、特定の音(特にサ行やタ行など、舌先を歯の裏側に当てる音)がわずかに不明瞭になったりすることがあります。また、マウスピースの縁が舌や歯茎に当たって、軽い違和感や口内炎を引き起こし、それが間接的に話しにくさにつながるケースも稀に見られます。このような場合でも、多くは数日から1週間程度で舌や口腔粘膜がマウスピースの存在に慣れ、発音も自然に戻っていくことがほとんどです。もし、話しにくさが長引いたり、痛みを伴ったりする場合は、マウスピースの調整が必要な可能性もあるため、我慢せずに担当の歯科医師に相談することが大切です。歯科医師によっては、装着初期の話しにくさを軽減するために、発音練習を推奨することもあります。例えば、ゆっくりと明瞭に話すことを意識したり、鏡を見ながら口の動きを確認したりするだけでも効果が期待できます。総じて、マウスピース型矯正装置は、他の矯正装置と比較して滑舌への影響は軽微であると言えますが、個人差があることを理解しておく必要があります。治療開始前に、起こりうる変化について歯科医師から十分な説明を受け、不安な点は解消しておくことが、安心して治療を進めるための鍵となるでしょう。