開咬治療の最前線!矯正歯科専門医によるアプローチ
開咬の治療は、その根本原因、症状の重症度、そして患者さんの年齢や生活環境など、多くの要因を総合的に考慮して様々なアプローチが取られますが、いずれの方法を選択するにしても、矯正歯科を専門とする歯科医師による精密な診断と、それに基づいた科学的な治療計画の立案が不可欠です。「自分で治す」という考えは、前述の通り極めて危険であり、必ず専門医の指導のもとで治療を進める必要があります。まず、矯正歯科医は、患者さんの口腔内の状態を詳細に把握するために精密な検査を実施します。これには、セファログラム(頭部X線規格写真)を含む各種レントゲン撮影、歯の型採り(印象採得)、顔面および口腔内写真の撮影、そして生活習慣や自覚症状に関する詳細な問診が含まれます。これらの多角的な検査結果を総合的に分析し、開咬の根本原因(例えば、顎骨の形態異常といった骨格的な問題なのか、個々の歯の傾斜や位置の異常といった歯性の問題なのか、あるいは舌突出癖や指しゃぶりといった後天的な悪習癖が深く関与しているのかなど)を正確に特定します。その上で、患者さん一人ひとりの状況に最適化された治療計画が立案されることになります。小児期でまだ顎の成長が活発な時期であれば、その成長ポテンシャルを利用した治療(咬合誘導や成長コントロール)が行われることがあります。具体的には、取り外し可能な機能的矯正装置の使用や、舌癖や口呼吸を改善するための筋機能訓練(MFT: Myofunctional Therapy)などが効果的な場合があります。特に、舌突出癖や指しゃぶりなどの悪習癖が主な原因であると診断された場合には、これらの癖を早期に取り除くための専門的な指導や、それを補助する装置の使用が治療の成功に不可欠です。成人で顎の成長が既に完了している場合には、主にマルチブラケット装置(いわゆるワイヤー矯正)や、近年普及が進んでいるマウスピース型矯正装置を用いた歯の移動が治療の中心となります。これらの装置を利用して、個々の歯を三次元的に適切な位置へと動かし、前歯がしっかりと噛み合う理想的な咬合状態へと改善していきます。