歯列矯正の時期を逃すとどうなる?治療への影響

歯列矯正治療には、それぞれの不正咬合の種類や個人の成長段階によって、より効果的とされる「適切な時期」が存在します。もし、その適切な時期を逃してしまった場合、治療にどのような影響が出るのでしょうか。必ずしも治療ができなくなるわけではありませんが、いくつかの点で不利になったり、治療の選択肢が狭まったりする可能性があります。まず、子供の矯正治療において、顎の成長を利用できる「第一期治療」の時期を逃した場合の影響です。例えば、受け口(反対咬合)や上顎前突(出っ歯)で、顎の骨格的な不調和が主な原因である場合、顎の成長が活発な時期(一般的に6歳~12歳頃)に介入することで、比較的簡単な装置で顎の成長をコントロールし、バランスを整えることが期待できます。しかし、この時期を過ぎて顎の成長がほぼ完了してしまうと、歯の移動だけで問題を解決するのが難しくなり、永久歯の抜歯が必要になったり、重度の場合は外科手術を伴う外科的矯正治療を選択せざるを得なくなったりする可能性があります。また、永久歯が生えるスペースが不足している場合も同様です。早期に顎を広げるなどの処置を行っていれば、非抜歯で歯を並べられたかもしれないケースでも、時期を逃すことで抜歯が避けられなくなることがあります。指しゃぶりや舌癖といった悪習癖も、長期間放置すると歯並びや顎の形に深刻な影響を及ぼし、改善がより困難になることがあります。次に、大人の矯正治療の場合です。大人には子供のような「顎の成長」というタイムリミットはありませんが、それでも時期を逸することによる影響は考えられます。最も大きなものは、歯周病の進行です。歯並びが悪いと清掃性が悪く、歯周病が進行しやすい環境になります。歯周病が進行してから矯正治療を始めようとすると、まず歯周病治療に時間を要し、さらに歯を支える骨が少なくなっているため、矯正治療自体が難しくなったり、治療のリスクが高まったり、あるいは歯の移動範囲が制限されたりすることがあります。理想的には、歯周組織が健康なうちに矯正治療を開始する方が、より安全で良好な結果を得やすくなります。また、加齢とともに歯の移動速度が若干遅くなる傾向があるため、治療期間が若い頃に比べて少し長くなる可能性も考慮に入れる必要があります。