歯列矯正中にいびきが気になり始めた場合、いくつかの対策を試みることができます。まず、睡眠時の姿勢を見直してみましょう。仰向けで寝ると、重力で舌が喉の奥に落ち込みやすく、気道が狭くなりがちです。横向きで寝ることで、舌根沈下を防ぎ、いびきを軽減できる場合があります。抱き枕を利用したり、背中にクッションを置いたりして、自然に横向きを維持できるように工夫するのも良いでしょう。次に、鼻呼吸を意識することです。口呼吸は舌を沈下させやすく、また口内の乾燥を招き、いびきの原因となります。日中から鼻呼吸を心がけるとともに、就寝時には市販の口閉じテープなどを試してみるのも一つの方法です。ただし、鼻炎や鼻中隔弯曲症などで鼻詰まりがある場合は、まず耳鼻咽喉科を受診し、鼻の通りを良くする治療を受けることが先決です。また、矯正装置が原因で一時的に舌の位置が変わっている可能性も考えられます。特に裏側矯正や一部のマウスピース型矯正の場合、装置に慣れるまでは舌の置き場に戸惑うことがあるかもしれません。担当の矯正歯科医に相談し、装置の調整が可能かどうか、あるいは舌の正しい位置(スポットポジション)を意識するトレーニングなどについてアドバイスをもらうのも良いでしょう。生活習慣の見直しも重要です。肥満は首周りに脂肪を蓄積させ、気道を圧迫するいびきの大きな原因となります。適度な運動とバランスの取れた食事を心がけ、体重管理を行いましょう。また、就寝前の飲酒や睡眠薬の服用は、喉の筋肉を弛緩させ、いびきを悪化させる可能性があるため控えるべきです。喫煙も喉の粘膜に炎症を引き起こし、いびきの原因となるため、禁煙が望ましいです。これらの対策を試みてもいびきが改善しない場合や、日中の強い眠気、起床時の頭痛、息苦しさなどを伴う場合は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性も考えられます。その際は、自己判断せずに、矯正歯科医に相談の上、呼吸器内科や睡眠専門医の診察を受けるようにしましょう。