昨日まで快適だった噛み合わせが、今日になって急に変わってしまった。このような時、単なる一時的な不調だけでなく、何らかの歯の病気が潜んでいる可能性も考慮する必要があります。まず疑われるのは、「歯周病」の進行です。歯周病は、歯ぐきの炎症や出血だけでなく、進行すると歯を支える骨(歯槽骨)を溶かしてしまう病気です。歯槽骨が失われると、歯がグラグラと動揺し始め、噛み合わせた時の位置が微妙に変わったり、特定の歯だけが強く当たるように感じたりすることがあります。特に、急性の歯周炎を起こした場合、歯ぐきの腫れとともに歯が浮いたような感覚を伴うことがあります。次に、「根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)」も原因の一つとして考えられます。これは、虫歯が進行して歯の神経(歯髄)が死んでしまったり、過去に神経の治療(根管治療)を受けた歯の根の先に細菌が感染し、炎症や膿の袋ができてしまう病気です。この炎症が強くなると、歯が突き上げられるような感覚が生じ、噛むと痛んだり、噛み合わせが高くなったように感じたりします。また、「歯根破折(しこんはせつ)」も急な噛み合わせの変化を引き起こすことがあります。これは、神経のない歯や、大きな詰め物をしている歯、あるいは強い歯ぎしりや食いしばりの癖がある人に起こりやすく、歯の根が割れてしまう状態です。歯根破折が起こると、噛んだ時の鋭い痛みや、歯ぐきの腫れ、そして噛み合わせの違和感などが現れます。さらに、稀ではありますが、「顎骨内の嚢胞(のうほう)や腫瘍」が原因で、歯が押されて位置が変わり、噛み合わせに影響が出ることもあります。これらの病気は、初期には自覚症状が乏しいことも多く、噛み合わせの違和感が最初のサインとなることもあります。放置すると症状が悪化し、治療が困難になったり、最悪の場合、歯を失うことにもなりかねません。したがって、急な噛み合わせの違和感を感じたら、自己判断せずに速やかに歯科医師の診察を受け、適切な診断と治療を受けることが極めて重要です。
噛み合わせの急変時に考えられる歯の病気