歯列矯正治療を受けたけれど、口元の突出感が十分に改善されなかった。あるいは、これから治療を始めるにあたり、歯科医師から「あなたの出っ歯は、通常の矯正だけでは治すのが難しいかもしれません」と告げられてしまった。そんな時、もう美しい横顔は諦めるしかないのでしょうか。いいえ、そんなことはありません。現代の矯正歯科医療には、難易度の高い出っ歯治療を成功に導くための、強力な「切り札」が存在します。その一つが、「歯科矯正用アンカースクリュー」の活用です。これは、チタン製の小さなネジ(直径1.5mm程度)を、麻酔をして歯茎の上から顎の骨に埋め込み、それを「絶対的な固定源」として利用する治療法です。従来の矯正治療では、前歯を後ろに下げる際、奥歯を支えにしていました。しかし、作用・反作用の法則で、前歯を引っ張ると、支えである奥歯も少し前に動いてしまうという問題がありました。これが、前歯を十分に後退させられない原因の一つでした。しかし、アンカースクリューは顎の骨にがっちりと固定されているため、これを支点にすれば、奥歯が前に動くことなく、前歯だけを最大限、効率的に後方へ移動させることが可能になります。これにより、従来の方法では難しかった大幅な口元の後退が実現できるのです。そして、それでも改善が難しい、土台となる顎の骨そのものに大きな問題がある「骨格性の出っ歯」に対する最終手段が、「外科的矯正治療」です。これは、歯列矯正と顎の骨を切る外科手術(顎骨切り術)を組み合わせた治療法。手術によって、上顎の骨を後方に移動させたり、下顎の骨を前方に移動させたりすることで、歯並びだけでなく、顔の骨格そのものを根本的に改善します。もちろん、外科手術には入院が必要ですし、リスクや体への負担も伴います。しかし、その効果は劇的で、長年のコンプレックスから解放され、全く新しい人生を歩み始める人も少なくありません。通常の矯正治療で「治らない」と言われたとしても、道が閉ざされたわけではありません。アンカースクリューや外科矯正といった選択肢があることを知っていれば、あなたの悩みにも必ず解決策は見つかるはずです。まずは諦めずに、高度な治療に対応できる専門医に相談することから始めましょう。