数年間の努力と高額な費用をかけて、ついに歯列矯正治療を終えた。しかし、装置を外して鏡を見た時、「あれ?思ったより出っ歯が治っていない…」あるいは「治療直後は良かったのに、最近また前に出てきた気がする」と感じてしまったら、そのショックは計り知れないでしょう。このような「矯正後の失望」を引き起こす最大の原因、それは「後戻り」です。後戻りとは、矯正装置によって動かされた歯が、何もしなければ元の位置に戻ろうとする現象のこと。歯の周りの骨や歯周組織は、まだ新しい位置に完全に馴染んでおらず、非常に不安定な状態にあります。特に、唇や舌の筋肉の圧力は、常に歯を元の位置へと押し戻そうとする力として働き続けます。この後戻りを防ぎ、美しい歯並びを定着させるために絶対的に不可欠なのが、保定装置「リテーナー」の使用です。歯科医師からは、治療終了後に「リテーナーを毎日、決められた時間装着してください」と、必ず指示があるはずです。しかし、あの煩わしい装置から解放された喜びから、ついリテーナーの使用をサボってしまう人が後を絶ちません。「一日くらい大丈夫だろう」「夜だけつければいいか」。そのほんの少しの油断が、数年間の努力を水の泡にしてしまうのです。後戻りは、治療終了直後が最も起こりやすく、ほんの数日リテーナーをつけなかっただけで、歯が目に見えて動いてしまうこともあります。そして一度後戻りしてしまった歯並びを、リテーナーだけで元に戻すのは非常に困難です。では、どうすればこの悲劇を防げるのでしょうか。答えはただ一つ、「歯科医師の指示通りに、真面目に、ひたすらリテーナーを使い続ける」ことです。特に治療終了後の最初の1年間は、あなたの歯並びの運命を決めると言っても過言ではありません。面倒でも、違和感があっても、それがあなたの未来の笑顔を守るための最も重要な習慣なのです。もし、すでに少し後戻りしてしまったと感じるなら、手遅れになる前に、すぐに治療を受けたクリニックに相談してください。場合によっては、再治療(部分的な矯正)が必要になることもありますが、放置すればするほど状況は悪化します。リテーナーは、あなたの矯正治療の「本当の最後のステップ」なのです。
矯正後に出っ歯が治ってないと感じる最大の原因と対策