私は長年にわたり、前歯がしっかりと噛み合わない「開咬」の状態に悩まされていました。日常生活では、食事の際に麺類がうまく啜りきれなかったり、サ行やタ行の発音が自分でも少し不明瞭だと感じたりすることは自覚していましたが、本格的な矯正治療は費用も高額で時間も長くかかり、何よりも矯正装置が目立つことに対する抵抗感が強く、なかなか治療に踏み出すことができませんでした。そんなある日、インターネットで「開咬 自分で治す方法」といったタイトルの記事を偶然見つけてしまったのです。その記事には、舌の筋肉を鍛えるトレーニング方法や、特定の口周りの筋肉を意識的に動かすエクササイズ、さらには市販されているという安価なグッズを使った改善方法などが、さも効果があるかのように紹介されていました。「もしかしたら、これで少しでも良くなるかもしれない」と、藁にもすがる思いで、いくつかの方法を自己流で試してみることにしました。最初に挑戦したのは、記事に書かれていた「舌を正しい位置に置く」というトレーニングでした。舌の先端を上顎の特定のスポットにつけるように常に意識するというものでしたが、これが想像以上に難しく、四六時中意識していると逆に顎や舌が疲れてしまい、長続きしませんでした。次に試したのは、割り箸を左右の奥歯で強く噛みしめ、その状態で前歯を無理やり閉じようとするという、今冷静に考えれば非常に危険極まりない方法でした。数日間、痛みを我慢しながら続けてみましたが、顎関節がギリギリと痛くなるだけで、前歯が閉じる気配は微塵も感じられませんでした。むしろ、噛み合わせが以前よりも不安定になり、余計におかしくなったような不快な感覚さえ覚えました。しかし、一番大きな後悔は、インターネットで見つけた海外製の安価な「歯列矯正器具」と称する正体不明のプラスチック製品を購入し、使用してしまったことです。粗末な説明書に書かれていた通りに装着してみましたが、歯茎に異常なほどの強い圧迫感があり、数時間後には耐え難い激しい痛みで我慢できなくなりました。それでも、「これは効果が出ている証拠なのかもしれない」と自分に言い聞かせ、無理に数日間使用を続けました。その結果、一部の歯が明らかにグラグラと動揺し始め、歯茎からは出血も見られるようになり、ようやく「これは絶対にまずいことになっている」と恐怖を感じ、使用を中止しました。
開咬自己流治療の結末?私の後悔と教訓